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2011.04.18 *Mon*

禁断の魔術 2

「図書室にあるらしいぞ、例のアレ」

「マジであるのか?禁忌の魔術書だろ?」

「そうそう、図書室の奥の特別室に鎖で雁字搦めにして
 誰にも触れられないようにしてあるってさ」

「そうまでするなら、ここに置いておかなければいいのにな」

「そこら辺に置いておくより安心ってことなんだろ?
 なんたって、魔術学校の特別室だもんな」






そんな会話を、今日も聞いた。




禁忌の魔術書

それを読んだ者は、何でも自由に願いが叶えられるという。

それ相応の代償と引き換えに。


相応、それは命にも関わるもの。



それ故、禁忌。

誰も犯してはならない、禁忌。




さぁ、どうする?








禁忌まで数センチ










「雷よ、刃となりて降り注げ!」

「水は凍り、氷の槍となる」

「轟け、雷鳴!!」

「貫け氷刃!!」


魔術バトル。

クラス関係なしの学校全体の試合だ。

半期に1度学校でのトップを決めるこのバトルに
みんな自分の全てを賭けて闘うのだ。

「悔しい、今度こそ勝てると思ったのに・・・」

「俺もだよ。結局やっぱり最後はあの二人なんだな」

「あぁ、リュカとユーグ。あと少しで決勝戦だな」



ユーグに言われるまでもなく
勿論手を抜くことなんてしない。

いくら相手が好きになった相手だからといっても
それとこれとは話が別だ。

それなりに、プライドもあるのだ。

それに、本気でいかなかったら
それこそ嫌われるのは目に見えているし、

本気を出さなければこちらも危うい。

それほどにユーグは手強いのだから。




1位を手放したことなんてない。

だったら、最後まで―――





ユーグとの闘いは魔力、スピード、詠唱の素早さ
とにかくすべての力を要するもはや体術だ。

「風よ、気性の荒さを見せてやれ。
 そして水よ、雨となり吹き荒れろ」

ユーグの魔術で風と雨が混ざる。
二つの魔術を混ぜ合わせるのは高等魔術。

さすがはユーグだ。


だが

「炎よ、舞い上がれ」

俺はそれだけ言うと手の中で揺れる炎に
ありったけの魔力を込めた。

「なんだあのリュカの魔術!」

「だんだん大きくなって・・・ていうより、大きすぎです!」


そう、これはとっておきの


「炎の龍、行け」


その言葉だけで、龍は忠実にユーグへと向かう。
ユーグの魔術を打ち消して。

「くそ、水壁よ!我を守れ!」


もう、無理だよ。

水壁はユーグを守ったけれど、
龍の威力には劣っていてユーグに襲いかかった。

「そこまで!勝者リュカ!」





「やっぱり、またリュカか」

「圧倒的、ですね」

そうでもない。
体力はユーグの方が上だし
長引くとこちらに不利だから早めに手を打っただけ。

それに、きっと俺がいなかったら圧倒的なのはユーグだ。
それほどユーグには力がある。



「くそ!リュカのやつ!」

「ユーグ、そう怒るなよ」

「怒らずにいられるか!!」


試合後にユーグと、ユーグと仲が良いイヴァンが並んで歩いていた。

そこに、偶然鉢合わせてしまった。


「リュカ」

「あ・・・」

試合後というのもあって気まずく、
咄嗟に言葉が出てこない。

「お前、あれから体調は崩さなかっただろうな?」

するとユーグからそう問いかけられた。

「え?あ、あぁ」

「熱もないんだろうな」

そうして、また額に手があてられる。

ドクン、とまた心臓が鳴る。

「大丈夫なようだな」

「あぁ・・・」

「そうでなければつまらないからな」


そう言って俺の隣をすれ違う瞬間

「常に体調は気遣っておけ。トップというのは狙われる立場だ。
 身体を壊して負けるなんて話にならないからな」

「ユーグ」

「倒すのは俺だ。他の誰にも倒されるなよ」

それだけ言って通り過ぎた。



憎まれ口を叩きながら
そうしながらでないとできない
彼の不器用な優しさだった。



そうしてまた、
俺の心を戻れなくするんだな。








苦しい。

きっと一生叶う事のない思いだと分かっているのに

不毛にも関わらず思い続けるなんて

なんて滑稽な自分。







そんな時、あの言葉が頭を過った。


相応の代償と引き換えに
願いを叶えてくれる禁忌の魔術書がここにあるんだって






相応の代償とは?
それと引き換えならば、

引き換えぐらいでどうにかなるものなら、

いっそ









命を奪いたい相手がいるならば

自分の命と引き換えだ


ならば好きな相手を振り向かせるには何が必要だ?

相手が好きになった瞬間
自分が相手を忘れてしまうとか?




でも、それも一種の幸せなのかもな。


俺はそうして自嘲の笑みを浮かべた。













では、この気持ちを忘れるには


何が代償だというのだろう




それが無性に、知りたくなった。











その夜


まさか自分がこんな無謀なことを仕出かそうとするとは
思ってもみなかった。

ただ、この苦しい思いから解き放たれたい。

それだけ。

それだけなのに。






図書室の中の特別室。

奥まった場所にある普段は開かないはずの鍵。

だけど、俺にとってはそんなもの
魔術で解錠するのは簡単なことだ。


ギィという音と共に開く扉


禁忌へと続くその扉をくぐって

俺はその前へとついた。




さぁ、何を見せてくれる?

何を引き換えにしたらいい?



どんな禁忌を犯しても
欲してしまうなんて


愚かでしかないのに




あと数センチ


8、7、6、5、


この気持ちを忘れるためには
何を代償にしたらいい?



さぁ、教えてくれ。







禁忌まで数センチ





・・・BACKTOPNEXT・・・
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category : 禁断の魔術

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